変化を受け容れる。
草木と過ごす日々から
見えてくることがある。

江口宏志
+山本祐布子

[ mitosaya 蒸留家 /
イラストレーター ]

STORY_02

HIROSHI EGUCHI + YUKO YAMAMOTO

DISTILLER / ILLUSTRATOR

千葉県大多喜町の薬草園跡地。何十もの種類の薬草、樹々の生い茂る「mitosaya薬草園蒸留所」。ここで栽培された植物や果物に加え、近年では形が悪く売り場に並ばなかった果物も引き取り、発酵から蒸留、熟成期間を経て瓶詰めまでひとつひとつ手作業で蒸留酒がつくられる。江口宏志さんと山本祐布子さんが日々自然と向き合うなかで大切にされていることについて、お話を伺いました。

正解がないからこそ
できたものを見て
「あ、こうなるのか」と
受け容れる楽しさがある。

小さな実験を積み重ねて
草木から抽出される創造の形。

――「mitosaya薬草園蒸留所」の原点について。おふたりで屋号を掲げて現在の活動をはじめ、大切にされていることがあれば教えてください。

江口:ぼくはここを始める前までずっと本の世界にいたのですが、自然と関わる仕事をしたいと考えていたとき、蒸留酒の世界に出会いました。薬草園跡地だったこの場所を見つけたのも偶然。ここにいると日々いろいろなことが起きるんです。蝋梅(ロウバイ)の花が咲いたり、近所の人が林檎を持ってきてくれたり。自然の中でこんなものがあるのか!という発見や出会い、製品にまで至る過程が楽しいので、それをどう人に共有できるかなと考えています。とくにお酒はつくる過程で変化していくもの。シャクシャクしていた林檎がドロッとしてお酒になって、さらに蒸留すると透明になる。「mitosaya」ではそういう過程も含めて伝えていきたいなと。

山本:わたしは絵を描く仕事をずっとしていたので、モチーフとして描いていた花が、咲いたら収穫するものに変わり、その香りや変化をどうにか形にできないかなと。はじめはシロップを見よう見まねでつくってみたり、薬草園のときから使われていた大きな乾燥機を使って花やハーブを乾燥させて、これだったらお茶になるかなというところから始めて。これをつくりたい、という目標に到達しようとするのではなくて、身近に出会ったものからこれだったつくれるかな?という小さな実験が積み重なって今に繋がっている気がします。江口さんは蒸留酒をつくるということに向かっていっているけれど、わたしは身近にあるものから今できる方法で形にするとしたら、どんなことができるかなと常に考えていますね。

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山本:わたしは絵を描く仕事をずっとしていたので、モチーフとして描いていた花が、咲いたら収穫するものに変わり、その香りや変化をどうにか形にできないかなと。はじめはシロップを見よう見まねでつくってみたり、薬草園のときから使われていた大きな乾燥機を使って花やハーブを乾燥させて、これだったらお茶になるかなというところから始めて。これをつくりたい、という目標に到達しようとするのではなくて、身近に出会ったものからこれだったつくれるかな?という小さな実験が積み重なって今に繋がっている気がします。江口さんは蒸留酒をつくるということに向かっていっているけれど、わたしは身近にあるものから今できる方法で形にするとしたら、どんなことができるかなと常に考えていますね。

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小さな実験を積み重ねて
草木から抽出される創造の形。

――「mitosaya薬草園蒸留所」の原点について。おふたりで屋号を掲げて現在の活動をはじめ、大切にされていることがあれば教えてください。

江口:ぼくはここを始める前までずっと本の世界にいたのですが、自然と関わる仕事をしたいと考えていたとき、蒸留酒の世界に出会いました。薬草園跡地だったこの場所を見つけたのも偶然。ここにいると日々いろいろなことが起きるんです。蝋梅(ロウバイ)の花が咲いたり、近所の人が林檎を持ってきてくれたり。自然の中でこんなものがあるのか!という発見や出会い、製品にまで至る過程が楽しいので、それをどう人に共有できるかなと考えています。とくにお酒はつくる過程で変化していくもの。シャクシャクしていた林檎がドロッとしてお酒になって、さらに蒸留すると透明になる。「mitosaya」ではそういう過程も含めて伝えていきたいなと。

山本:わたしは絵を描く仕事をずっとしていたので、モチーフとして描いていた花が、咲いたら収穫するものに変わり、その香りや変化をどうにか形にできないかなと。はじめはシロップを見よう見まねでつくってみたり、薬草園のときから使われていた大きな乾燥機を使って花やハーブを乾燥させて、これだったらお茶になるかなというところから始めて。これをつくりたい、という目標に到達しようとするのではなくて、身近に出会ったものからこれだったつくれるかな?という小さな実験が積み重なって今に繋がっている気がします。江口さんは蒸留酒をつくるということに向かっていっているけれど、わたしは身近にあるものから今できる方法で形にするとしたら、どんなことができるかなと常に考えていますね。

時間を共にするからこそ
変化を受け容れられる。

――色彩や形、手触り、食感や味や色々な発見があるなかで、それらをどう形にされているのでしょうか?

山本:植物が一番活躍する華やかな時期って、いわゆる実りの季節。梅だったら5月、6月ごろに収穫しますが、その植物の1年間すべてを知ることができるからこそ、実りの前後にも色々なことが起きていると発見できる。1年、2年、3年と付き合いながら、少しずつその樹の情報を集めていくような感覚があります。ジャム、お茶、シロップを基本に、毎月5~6種類ほどつくっているのですが、蒸留の後、お酒が抽出された後のもろみを使ってソースをつくったりと、原材料を見てそれにふさわしい形に加工をしていくので色々なものが生まれます。正解を決めてしまうとそれ以外がアウトになってしまうけれど、できたものを見て「あ、こうなるのか」と受け容れられる楽しさがありますね。

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story-slide04
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江口:祐布子は絵を描いたりものをつくれる人だけど、ぼくはどちらかというとそれを周りで見ていてサポートするような仕事を続けてきたので、なんとなく今も自然のものを見守っているという感覚があります。お酒を寝かしている期間は、半分期待、半分忘れるという感覚に近いかもしれません。まずは「保存できる」ことがとても大事。生のものを扱っていると常に腐ってしまう可能性があるので、そのものの良いタイミングが失われてしまうことが怖いんですね。蒸留までできてしまえば保存状態に入って、どちらかというと良くなるというボーナスタイムが生まれるので、そこまでいけたら一安心です。忘れている頃にもう一度思い出して、そろそろかな……と期待値が高まったときにまた出てきてくれたらいいなと。

時間を共にするからこそ
変化を受け容れられる。

――色彩や形、手触り、食感や味や色々な発見があるなかで、それらをどう形にされているのでしょうか?

山本:植物が一番活躍する華やかな時期って、いわゆる実りの季節。梅だったら5月、6月ごろに収穫しますが、その植物の1年間すべてを知ることができるからこそ、実りの前後にも色々なことが起きていると発見できる。1年、2年、3年と付き合いながら、少しずつその樹の情報を集めていくような感覚があります。ジャム、お茶、シロップを基本に、毎月5~6種類ほどつくっているのですが、蒸留の後、お酒が抽出された後のもろみを使ってソースをつくったりと、原材料を見てそれにふさわしい形に加工をしていくので色々なものが生まれます。正解を決めてしまうとそれ以外がアウトになってしまうけれど、できたものを見て「あ、こうなるのか」と受け容れられる楽しさがありますね。

江口:祐布子は絵を描いたりものをつくれる人だけど、ぼくはどちらかというとそれを周りで見ていてサポートするような仕事を続けてきたので、なんとなく今も自然のものを見守っているという感覚があります。お酒を寝かしている期間は、半分期待、半分忘れるという感覚に近いかもしれません。まずは「保存できる」ことがとても大事。生のものを扱っていると常に腐ってしまう可能性があるので、そのものの良いタイミングが失われてしまうことが怖いんですね。蒸留までできてしまえば保存状態に入って、どちらかというと良くなるというボーナスタイムが生まれるので、そこまでいけたら一安心です。忘れている頃にもう一度思い出して、そろそろかな……と期待値が高まったときにまた出てきてくれたらいいなと。

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時間や場所、空気も含めて
日々向き合うことから届けていく。

――日々生き物と向き合って発見したことと、届けることはどんなふうに繋がっているのでしょうか。自然と向き合うなかで、感じられていることがあれば教えてください。

山本:手を加えたら加えるほど、自分の意志が入ってきてしまいますし、迷えば迷うほど手数は増えて、ものの結果として見えてきてしまう。絵を描くときも線が増えれば増えるほど、なんだかまどろっこしくなるのですが、さっと描いた勢いのある線って、強かったりする。オー・ド・ヴィーの良さって、結果から透けて素材が見えてくるところだと思うんです。梅、シナモン、と素直に素材そのものを表現することが多いのかなと。摘んだ花をその場で配れたらそれが一番良いと思うんですけれど、今、自分たちが過ごしている時間や場所の空気も含めて届けていけたらいいなと思います。

江口:環境に対して個人でできることって多勢に無勢というか、限られていますが、この場所をはじめるとき、植樹をしたんです。今頃やっと花が咲いてこれから実がなるかなという時期なんですけれど、植えてくれた人に、今年はこんなものをつくりましたと手紙とプレゼントを送っていて。その交流がとても良いなと。ぼくらみたいに小さな蒸留所では、お金も場所も時間も限られているなかで、つくる理由がなければつくれない。逆に言えばつくる理由があるものしかつくっていないんです。だからこそ、お客さんが手に取る理由にもなり得るのかなと。もちろん今いる場所に出会ったのも偶然なので、違うやり方もあったかもしれないんですけれど。あまり自分はこうではなくてはダメというようなことではなく、来るものは拒まず最大限に活かしながら、自分たちにとっても周りの人にとってもいいねと思ってもらえるものをつくっていきたいしですし、伝えていけたらいいですね。

植物と過ごす1年間、
実りの季節の前後にも
色々なことが起きている。
その発見を伝えたい。

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江口宏志 山本祐布子

江口宏志

Hiroshi Eguchi

蒸留家

書店経営等を経て蒸留家の道へ。南ドイツの蒸留所、Stählemühleで蒸留技術を学んだのち、日本の優れた果樹や植物から蒸留酒を作る、mitosaya薬草園蒸留所を設立。「自然からの小さな発見を形にする」をモットーに、これまでに約150種の蒸留酒、季節の恵みを閉じ込めた加工品などをリリースしている。

山本祐布子

Yuko Yamamoto

イラストレーター

Mitosayaでは、ボタニカルプロダクトの開発や、フード・ドリンク全般に携わる。マップのイラストレーションももちろん彼女によるもの。京都精華大学テキスタイルデザイン科卒業。切り絵、水彩画、ドローイング等いくつかの技法を使い、 装丁、広告、プロダクトデザインなどに関わる。

WEB

江口宏志

Hiroshi Eguchi

蒸留家

書店経営等を経て蒸留家の道へ。南ドイツの蒸留所、Stählemühleで蒸留技術を学んだのち、日本の優れた果樹や植物から蒸留酒を作る、mitosaya薬草園蒸留所を設立。「自然からの小さな発見を形にする」をモットーに、これまでに約150種の蒸留酒、季節の恵みを閉じ込めた加工品などをリリースしている。

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Mitosayaでは、ボタニカルプロダクトの開発や、フード・ドリンク全般に携わる。マップのイラストレーションももちろん彼女によるもの。京都精華大学テキスタイルデザイン科卒業。切り絵、水彩画、ドローイング等いくつかの技法を使い、 装丁、広告、プロダクトデザインなどに関わる。

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