演じることは
誰かを気にかけること。
自分という輪郭を超えて。
[ 俳優 ]
STORY_01
SHIZUKA ISHIBASHI
ACTOR
幼少期からクラシックバレエをはじめ、10代の後半からはアメリカ、カナダへダンス留学。帰国後はダンサー、女優として映画初主演作で新人賞を受賞するなど、踊ること、演じることの境界を溶かすように、独特の表現力で異彩を放つ、石橋静河さん。常にあらたな領域を開拓するようにさまざまな役をこなす石橋さんが今、表現することの先に見据えられていることについてお話を伺いました。
――踊ること、演じることについて。石橋さんにとって身体を使って表現することを続ける理由は?
小さい頃からバレエを通じて「型」を身につけることに向き合ってきて、10代の後半から「型」ではなく振り付け家の意図からつくられる、コンテンポラリーダンスも面白いなと思うようになりました。ただ「わたしの表現したいこと」というものが必要とされたとき、当時20歳になったばかりで蓄えがないなか、表現を突き詰めていくのは難しいと思ったんですね。その頃にお芝居と出会い、自分とは違う、他人(ひと)の考え方や生き方を知ることは蓄えになるかもしれないと。役者って、誰かの力に頼る役割というか、監督やスタッフの方々や支えてくれるひとがいないと存在できないことが面白いですし、続ける原動力になっていると感じています。
――「演じる」ことを通じてはじめて見えるようになったことがあれば教えてください。
以前は透明なそのひと(役)を自分の身体にフィットさせて同化するような感覚で、撮影現場以外でもそのひとのことを思い続けていたんです。でもそれを続けてしまうと、自分の生活がなくなってしまって。身の回りのひとにもふだんと違うわたしと接しなくてはいけないという負荷がかかってしまう。けれど健康でなければ、ひとを助けることもできないですよね。自分が豊かな時間を過ごしていたら、ひとにも大丈夫?と声をかけられる。誰かの役を演じるって誰かのことを気にかけることと似ている気がするから、健康でいることが大事だなと思うようになりました。
――「演じる」ことを通じてはじめて見えるようになったことがあれば教えてください。
以前は透明なそのひと(役)を自分の身体にフィットさせて同化するような感覚で、撮影現場以外でもそのひとのことを思い続けていたんです。でもそれを続けてしまうと、自分の生活がなくなってしまって。身の回りのひとにもふだんと違うわたしと接しなくてはいけないという負荷がかかってしまう。けれど健康でなければ、ひとを助けることもできないですよね。自分が豊かな時間を過ごしていたら、ひとにも大丈夫?と声をかけられる。誰かの役を演じるって誰かのことを気にかけることと似ている気がするから、健康でいることが大事だなと思うようになりました。
――踊ること、演じることについて。石橋さんにとって身体を使って表現することを続ける理由は?
小さい頃からバレエを通じて「型」を身につけることに向き合ってきて、10代の後半から「型」ではなく振り付け家の意図からつくられる、コンテンポラリーダンスも面白いなと思うようになりました。ただ「わたしの表現したいこと」というものが必要とされたとき、当時20歳になったばかりで蓄えがないなか、表現を突き詰めていくのは難しいと思ったんですね。その頃にお芝居と出会い、自分とは違う、他人(ひと)の考え方や生き方を知ることは蓄えになるかもしれないと。役者って、誰かの力に頼る役割というか、監督やスタッフの方々や支えてくれるひとがいないと存在できないことが面白いですし、続ける原動力になっていると感じています。
――「演じる」ことを通じてはじめて見えるようになったことがあれば教えてください。
以前は透明なそのひと(役)を自分の身体にフィットさせて同化するような感覚で、撮影現場以外でもそのひとのことを思い続けていたんです。でもそれを続けてしまうと、自分の生活がなくなってしまって。身の回りのひとにもふだんと違うわたしと接しなくてはいけないという負荷がかかってしまう。けれど健康でなければ、ひとを助けることもできないですよね。自分が豊かな時間を過ごしていたら、ひとにも大丈夫?と声をかけられる。誰かの役を演じるって誰かのことを気にかけることと似ている気がするから、健康でいることが大事だなと思うようになりました。
――言葉にはできない感覚を、表現することについて、どう思いますか?
留学から帰ってきたばかりの頃、「わたしはこう思う。だってこうだから」と英語の文法のまま日本語を話してしまって、言葉にすることをコンプレックスに感じていた時期がありました。なにか言おうとしてもうまく言葉が出てこなくて悶々としながらノートに言葉を綴ることでやっと吐き出せる。だからこそダンスに傾倒していたところもあると思います。言葉を信頼していなかったんですよね。無意識の内に、これは言ってはいけないとか、口にすることのほどでもないかなと思ってしまっていたんです。でもその些細な感覚こそ、お芝居では伝えなくてはいけないので、言葉にしてみることは大事なステップなのかもしれないなと。
――些細な身振りや視線の動きだけでも、そこに物語や意味が生まれる舞台において、言葉で表現することは?
映像だとマイクが声を拾ってくれますが、舞台だとほぼ生の声で舞台の最後列まで届けてそれを理解してもらわなくてはいけない。そうなったときにはじめて、たとえばどうしてここに句読点があるんだろう、こういうことを言いたいからこういう言い回しなんだなと日本語を一から勉強するように文字を見るようになり、だんだんと自分のなかで馴染んできたという感じです。それから、言葉を使わざるを得ない環境に置かれた今感じるのは、コミュニケーションって大事だなと。自分の言葉を発して、ひとに聞いてもらい、答えてもらって、ということを無駄だと省いてしまってはいけないのかなと感じています。言葉にしなくていいときもあるけれど、言葉にできると思える準備があることは大事だと思いますね。
――言葉にはできない感覚を、表現することについて、どう思いますか?
留学から帰ってきたばかりの頃、「わたしはこう思う。だってこうだから」と英語の文法のまま日本語を話してしまって、言葉にすることをコンプレックスに感じていた時期がありました。なにか言おうとしてもうまく言葉が出てこなくて悶々としながらノートに言葉を綴ることでやっと吐き出せる。だからこそダンスに傾倒していたところもあると思います。言葉を信頼していなかったんですよね。無意識の内に、これは言ってはいけないとか、口にすることのほどでもないかなと思ってしまっていたんです。でもその些細な感覚こそ、お芝居では伝えなくてはいけないので、言葉にしてみることは大事なステップなのかもしれないなと。
――些細な身振りや視線の動きだけでも、そこに物語や意味が生まれる舞台において、言葉で表現することは?
映像だとマイクが声を拾ってくれますが、舞台だとほぼ生の声で舞台の最後列まで届けてそれを理解してもらわなくてはいけない。そうなったときにはじめて、たとえばどうしてここに句読点があるんだろう、こういうことを言いたいからこういう言い回しなんだなと日本語を一から勉強するように文字を見るようになり、だんだんと自分のなかで馴染んできたという感じです。それから、言葉を使わざるを得ない環境に置かれた今感じるのは、コミュニケーションって大事だなと。自分の言葉を発して、ひとに聞いてもらい、答えてもらって、ということを無駄だと省いてしまってはいけないのかなと感じています。言葉にしなくていいときもあるけれど、言葉にできると思える準備があることは大事だと思いますね。
――演技や表現を通じて、「伝わる」とはどういうことなのでしょう。どうすれば「伝わる」と思いますか?
《未練の幽霊と怪物》という作品で能の形式を使ってお芝居をしたのですが、演出家の岡田利規さんは役者の想像したものは観客も見えるはずだという考え方をされているんですね。役者が「海にいる」という想像をして舞台に立っていれば、それは(観客にも)伝わると。はじめは本当に?と思っていたんです。実際に舞台では海の音もしなければ海を表現するセットもない。けれどそのお芝居を観てくれた何人かのひとたちから、海が見えたと聞いて。それを信じていいんだなと。作品のはじまりって、つくるひとが「想像する」ことから形になっていくじゃないですか。だからこそ、それを伝えるにはお客さんを信頼することからはじめないといけないのかもしれません。
――他人(ひと)の生き方に向き合い演じることの先に、自分以外のひとや生き物と共に歩んでいく環境を守っていくために、今からできることはなんだと思いますか?
今ひとりひとりが一生懸命に生きている中で、そのなかでできることを考えて、それぞれが選択をすること、続けられることを身につけることが大事だと考えています。ひとが地球にかけている負荷が大きすぎて、環境がそれに耐えられないという状況になっているなか、環境を大事にしなくてはいけないということは絶対的にそうだと思うんです。でも自分の生活を殺してしまったら、きっと続かない。生きていく上でのひとつの選択が、生きることと繋がっているからこそ、誰かに否定されることも否定することもしてはいけないと思うんです。どう使うかどう着るか、どう食べるか。その選択の背景にどんな負荷があるのか、ということを想像することが大切なのではないかな、と思います。
生きていく上での選択は
生きることと繋がっている。
その背景を想像することが
大切なのかもしれません。
Shizuka Ishibashi
俳優
1994年生まれ。東京都出身。2015年の舞台『銀河鉄道の夜2015』で俳優デビュー。初主演作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』では、第60回ブルーリボン賞新人賞ほか多数受賞。以来、映画『あのこは貴族』『前科者』、舞台『近松心中物語』『桜姫東文章』、ドラマ『鎌倉殿の13人』『探偵ロマンス』など、幅広く活躍。THEATER MILANO-Zaこけら落とし公演『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』に出演予定。
Styling: KAORI KAWAKAMI
Hair & Make: Aya Murakami
Shizuka Ishibashi
俳優
1994年生まれ。東京都出身。2015年の舞台『銀河鉄道の夜2015』で俳優デビュー。初主演作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』では、第60回ブルーリボン賞新人賞ほか多数受賞。以来、映画『あのこは貴族』『前科者』、舞台『近松心中物語』『桜姫東文章』、ドラマ『鎌倉殿の13人』『探偵ロマンス』など、幅広く活躍。THEATER MILANO-Zaこけら落とし公演『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』に出演予定。
Styling: KAORI KAWAKAMI
Hair & Make: Aya Murakami