new beginning

見えてしまった問題から、目を逸らさないように。

ステイホーム期間がマガジンの制作期間と重なってしまったこともあって、前半はとにかく作業に集中していたような気がします。「HUG」は、会社組織ではあるんですが、もともと通勤という概念がなくて。みんながお互いにリスペクトして、自分がやるべきことをやるという信頼関係が築けていたので、管理する必要もなかったんです。だから、リモートになったことでの変化は、普通のオフィスワーカーの人たちほど大きくはなかったかもしれません。ZOOMも積極的に使いましたけど、会議をするというよりも、みんなで時間を決めて繋ぎっぱなしのまま、それぞれ自分の編集作業をしていました。マガジンを作る上では、困ったこと、聞きたいことがあったら話しかけられる、同じ空間で作業しているような状況があった方がいいと思ったからです。

コロナは全世界に降りかかった出来事で、政治のよくないところや、人の活動が制限されたことでCO2排出量が減少したり、本当にいろんなことが炙り出されましたよね。気づきもたくさんあった分、向き合うべき問題も大量に見えてきてしまった。私自身も、それまで普通にコンビニ弁当を食べていたけど、自炊をするようになったことで初めて、食材がどこからきていて、どういう包装がされていて、どれくらい買ったらどれくらいのプラスチックゴミがでるのかということに意識が向いて。ひとつの料理を食べるだけで、これだけゴミを出してしまうのはマズいと思って、シリコンラップを使うようにもなりました。もともと『HIGH（er）magazine』は、ファッションから政治、社会情勢、ジェンダーまで、日常に通じる物事に目を向けようと生まれたはずなのに、忙しさのあまり自分の生活の細部がおそろかになってしまっていたと反省もして……。炙り出された問題はどれも、自分たちの生活の延長線上にあるんだということを、すごく意識させられた出来事でもあったなと思います。

5月に起こった検察庁法改定案のツイッターデモを見ていても、政治に対して声をあげることをタブー視する時代は、もう通り過ぎたんだなと思いました。「HUG」では、ヨーゼフ・ボイスが提唱した「社会彫刻」という概念（一人ひとりの認識が変われば、社会システムそのものも変えられる＝社会彫刻）を共通意識として持っているんです。私たちなりに向き合うべき問題一つひとつとどう関わっていくのか、とにかく見えてしまったものから目を逸らさずに考え続けていきたいと思っています。

S/S Halfdome California Logo Tee

商品型番NTW32040
FabricT/C Knit（ポリエステル72%、綿28%）

どんな状況下でも、ベストな状態で挑めるように。

仕事も休業になり、海外のレースにも出られないという状況になって、自粛期間の始めの3週間は、走りもせず、眠れない日々が続きました。私は、身体はすごく強いのだけど、メンタルがすごく弱くて……。100マイルレースにもなると、それが顕著に表れるんです。精神的にはボロボロなのに、筋肉は全然張っていなかったり、逆にハイになっているのに、足が痛くて思うように走れなかったり。そうした浮き沈みがなく走れる人がレースで勝てる人で、自分もそうありたいと思ってレースに挑み続けているんだと、これまでを振り返ってみて改めて思いました。心身にブレがなければ、こんなコロナ禍にも負けないのに……って。

でも、一度落ち込み切ったのがよかったのかもしれません。だんだんと今ある状況の中で何ができるだろうと、思考が切り替わっていきました。トレーニングのプランを考えることに苦手意識があったので、これまで専門のコーチをつけていたんですが、人と会えない状況なので自分でやるしかなくなって。でも、実際にやり始めたら楽しくなりました。自炊もそう。自分が持っているものを生かすことに面白さを感じられるようになりました。

それに、やっぱり走ることは続けたいと強く思いました。トレイルランニングは年齢関係なく、いくつになってもいつでもレースに挑むことができると思っていたけれど、一日一日状況が変化していく今となっては、レースがいつ中止になるとも、いつ再開されるとも予想がつきません。なので、出られる時に出られるように。身体は1日ではつくれないので、常にスタンバイの状態を保っておこうと。

そしてもう一つ、ロックダウンによって大気汚染が改善されて、数十年ぶりにインドから200キロほど離れたエベレストが見晴らせるようになったとニュースで知りました。気候変動については、昨年からもっと知りたいと思うようになったのですが、これからは私も自然の中に入っていく立場として、学術的な難しい言葉ではなく、自分の目で見たことを自分の言葉で発信していけるようになりたいと思っています。

S/S Colorful Logo Tee

商品型番NTW32037
FabricPolyester Knit（ポリエステル100%）

本来、オリンピズムとは人生をクリエイトする哲学だった。

自粛生活を始めて最初の3日間、一つのことだけをずっと考えていたんです。それは、「よりよい人間になるには？」ということ。自分の感性や考えだけが正しいと思うな。それによって、他人をジャッジするな、押し付けるな。人の話をちゃんと聞け。どれも争いを生まないための根本原則ですよね？　そんなことを考え続けていたら腹も減らなくて、気付いたら飲まず食わずで3日間経ってたんですよ。自動的にファスティングになったので、そのままさらに4日間絶食を続けました（笑）。

昨年から、アルペン日本代表の国内強化ヘッドコーチに就任して、2030年、2034年の選手たちにメダルを取らせるプランを主導しているんです。彼らのことも、どこか自分の基準でジャッジしようとしていなかっただろうか……と。選手時代からずっと、自分は勝つために誰よりも精神と時間とお金を費やしてきたという自負がありました。それに、オリンピック選手になると周りにちやほやされて、感性が磨かれなければならない年頃に自分よがりになっていた時期もあった。でもその自負こそ、いわゆる過去の栄光というやつで、今の自分に一番必要のないものだと気がついて……。そうして自分自身を省みる一週間だったんです。

そもそも、アスリートにとってのオリンピックは、結果を出すことがすべてではないんです。オリンピズムとは、競技に対する弛まぬ努力によって養われた健全な精神が、世の中のすべての物事を融合し、調和させること。それは、人生をクリエイトしていくための哲学で、そうした精神が伴ってこそ、人に感動を与えられるのだと。世界で起こっている紛争や環境問題など、あらゆる問題を解決する力でもあるんです。僕は、25歳で2度目のオリンピックに出る時に、「そもそもオリンピックとは何なのか」と思って調べてみて、このオリンピズムという哲学を知りました。すごく感動して、ソチを最後にしようと決めた時も、これからはオリンピックで学んだことを、よりクオリティ高く伝えていきたいと思った。この自粛期間中、これまでの人生でこんなに家にいたことなんてないくらい篭ったおかげで、そうしたさまざまな思考の整理ができました。

L/S Sleeve Graphic Tee

商品型番NT32042
FabricGD Heavy Cotton（綿100％）

自然の中で打ちひしがれないとわからないことがたくさんある。

東京に暮らしていて、この自粛期間に何を思ったかといえば、都会はいかに人間本位のシステムで成り立っているのかということでした。実際、人里離れた山の中で暮らしているような人にとっては、何の打撃もないということもあったはずです。自然に囲まれて生きるというのは、予想外のことが起こってあたり前、思い通りにはいかないストレスと向き合うことでもありますよね。一方で、人間本位のシステムというのは、身の回りのすべてをコントロール下に置くことで、そのストレスと向き合わずに済むように、楽できるように構築されてきたもの。その閉ざされた世界では人間も自然の中のひとつの要素であるという現実を忘れてしまう。そして、自分にとって親しいものだけで世界をつくろうとすることで、さらに脆弱になっていく。それに、便利さを求めることは、生きる能力を落とすことでもあります。便利さを手に入れる代わりに、何を失ってきたのかということを、誰もが自覚すべき時ではないかなと。

そんな風に思った時、今こそ自然に入るべきだと感じました。自分は、時間が空くととにかく山を歩くんですが、それはどこか、都会で過ごすうちに鈍ってしまった生きる力や、“自分は正しい”“自分は間違わない”と傲慢になってしまった自分を見つめ直すためでもあるんです。自然の中で、思い通りにならないことの連続に打ちひしがれないとわからないことがたくさんありますから。

海外渡航ができるようになったら、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』で取材したいと思っている題材のひとつには、やっぱり難民問題があります。今考えているのは、アフリカのチュニジアから地中海を超えてイタリアへ入り、そこからフランスを目指すルート。イタリアからフランスに入る国境が山岳地帯になっていて、雪を知らないアフリカの人たちが、冬にこの雪山を軽装で越えていくのはハードな上に、国境警備隊に見つかると捕まってしまうというリスクもあります。彼らの道のりは、現在の地球上で最も切迫した旅だと言えます。安らかに暮らせる土地を目指して、命がけで国境を越えていくんです。そして僕がその旅路をこの目で見たいと思うのは、そこにあるのが必ずしも恐怖や悲しみだけではないと知ったからです。去年、アフガニスタンの戦禍を逃れ、粗悪なゴムボートでギリシャの島へたどり着いた青年と出会いました。彼は僕にその旅の模様を語りました。どのようにして危険な国境を越えイランへと入り、続けざまに国境警備隊の目をかいくぐってトルコへと侵入したか。そして真夜中に過剰乗船ボートでこっそりと越える真っ暗な地中海のいかに恐ろしいことか……。驚くべきことに、そう語る彼の表情には悲壮感などひとつもありませんでした。彼は人生に一度きりの、壮大な冒険譚を語っていたのです。多すぎる障壁の一つひとつを嘆き、しかし時に楽しみながら力強く突き進んでいく彼らの壮大な冒険を、僕は見に行きたい。どんなに悲しい一歩から始まった旅であっても、それが冒険である以上、どこかにワクワクやドキドキが待っている。それを確かめに行きたいと思っています。

S/S Small One Point Logo Tee

商品型番NT32039
FabricT/C Knit（綿78％、ポリエステル22％）

“土”は、除菌しすぎもいけないと言っている。

『Spectator 』の次号で「土」を特集しようと考えていたので、自粛中はずっと、土にまつわる本を読んでいました。デイビッド・モントゴメリーというアメリカの地質学者が書いた『土の文明史ローマ帝国、マヤ文明を滅ぼし、米国、中国を衰退させる土の話』『土と内臓微生物がつくる世界』（アン・ビクレーとの共著）『土・牛・微生物文明の衰退を食い止める土の話』（すべて築地書館）という 3 冊。中でも、『土と内臓』は、特に興味深い内容でした。土の中にいる微生物は枯れ葉や生物の死骸などの有機物を分解して土を肥沃な土壌へと変え、人の体内にいる微生物は腸内環境をバランスよく保つための働きをしている。この土と腸の微生物には通じるところがあるという話なんです。たとえば、農作物を強引に育てようと農薬や化学肥料を使えば微生物が生息できなくなり、脆弱な土になってしまう。同じように、人間の身体も抗生物質を飲み続けると薬剤耐性菌が増え、それらが有益な微生物を弱らせ免疫力を低下させていく。土の中と身体の中で、同じようなことが起こっているという。

今、なぜこれを面白いと感じているのかといえば、20 世紀以降、急速に科学が発達したことで、農業においても医療においても、それまでの原初的な手法には科学的な裏付けがないという理由から否定されて、ケミカル一色になってしまった。それがここへ来て、分析方法も進化してきたことで、ケミカルに弊害があることが明らかになってきただけでなく、皮肉にも原初的な手法が実は理にかなっていたんだということが、科学的に立証されたというところなんです。

このコロナ禍で、除菌の意識がさらに高まってきていますよね。もちろんある程度は必要なことだとは思いますが、本来いい働きをする菌や微生物も一緒に排除していること、それによって抵抗力を弱めてしまうかもしれないことも知っておいたほうがいいと思うんです。そして、除菌意識が“潔癖”につながってしまうのも怖いことですね。現に、ネットでも少し人と違ったことを発言すると“除菌”されたり、歓楽街すらない無味乾燥な新興住宅地ばかりが増えていったり。そんな風に社会がクリーン化されてしまうと、カルチャーも死んでしまいます。善玉菌と悪玉菌のように、多様性がありながら均衡が保たれている状態こそが健全なんだということを、微生物から学ぶ時なのかもしれません。

S/S Pictured Square Logo Tee

商品型番NT32036
FabricHeavy Cotton（綿100％）

順応することで、別の視点が生まれた。

自分は、辺境も都市もさまざまなフィールドを縦横に歩いて見聞きすることが活動のベースになっているので、外出自粛期間というのは、自分の生き方自体に大きな制限がかかっているようなものでした。でも、ヒマラヤ遠征などの高所順応やベースキャンプでのテント生活も、ある意味では“ステイホーム”のようなもの。そこでは、限られた装備しかない小さな家（テント）で、2カ月間ほど暮らさなければならないわけですから。

この夏は、パキスタンのK2遠征の計画が流れてしまったり、ブラジルのサンパウロで開催準備を進めていた大きな展覧会も延期せざるを得なかったりと、いろいろ予定が変わってしまったのですが、そうした変化に少しずつ順応していくなかで、自ずと撮りたいものも生まれてきました。

ひとつは、完全に家の中で撮る写真。自分の部屋の窓に遮光シートを貼って真っ暗にして、そのシートに穴を一点あけます。すると、暗い部屋の中に外景が映し出されるんです。それは、カメラの原型であるカメラ・オブスクラ（像を映し出す光学装置で、カメラの元となった仕組み）そのもので、その風景をさらに写真に撮る。そんなことをしていました。外に出られないなら、家のなかに外の風景を引きこんでみよう、と。実験的なことを試してみるいい機会になりましたね。

それから、人の動きが止まった東京も撮っておきたいと思いました。渋谷には再開発のために巣を追われたネズミが以前から出ていましたが、自粛期間を経てさらに増殖しています。足元を気にしながら歩いていると、道端に捨てられたタピオカドリンクの残りをストローで吸っているネズミや、ハイボール缶の残りを飲んで千鳥足になっているネズミなんかに出会って、少しずつ撮り始めました。ちょっと前に、カミュの『ペスト』（1957年に発表された、伝染病「ペスト」に翻弄される人々を描いた小説）が再注目されていましたよね。この物語は、主人公が死んだ鼠に気付くところがはじまります。渋谷を歩いていて、あのシーンを思い出した。渋谷のネズミは炭鉱のカナリアみたいなもので、東京の野生がコロナ禍によって逆に目覚め始めたのかな、と。このシリーズは、いずれ一冊にまとめたいですね。

S/S Half Dome Tee

商品型番NT32045
FabricRecycle Soft Poly（ポリエステル100％）

変わるべきタイミングで変わっていくこと。

あらゆる物事の動きが止まっていくのを目のあたりにして、この世界はこんなにも脆かったんだと分かった時、それまで俳優業やエンターテイメント業界に対して思い描いてきたこと、感じていたことも、一旦フラットになったような気がしているんです。

実際には、エンターテイメント業界は如実に煽りを受けて撮影ができなくなって、再開されると今度は、フェイスガードに消毒、私語はなるべく謹んで……と、現場がまったく別ものになってしまいました。“コロナ対策は万全です”という対外的な配慮も今まで以上に必要になってきて、現場は本当に大変な時代になってしまったなと。でもその反面、自粛期間中にNetfrixのような動画配信サービスに登録する人が急増して、過去の作品を再発掘してもらえたのはすごくうれしいことでした。新しいものは作れない状況ではあったけど、残るものさえ作っていれば、そこにたどり着いてくれる人たちは必ずいる。それが知れて、自分たちのやってきたことにはニーズがあるんだと、改めてその意義を感じることができました。

そんな状況の中で、仕事に対する思いも少しずつ変わってきました。これまでは俳優として自分なりに目指すところがあって、そこにたどり着くために精一杯やってきたつもりでした。でも、感情がフラットになったことで肩の力も抜けて、ひとつの目標だけに縛られなくてもいいんじゃないか、他にも自分にできることがあればやってみたいと思うようになって。それくらい、目の前のものが大きく揺らいだということなんでしょうね……。

このコロナ禍で、エンターテイメント業界に限らず、政治や社会システム、さまざまな物事が、これまであまりにも変わってこなかったということも浮き彫りになりました。それを誰かのせいにすることもできるけれど、そこを踏みとどまって自分ごととして行動を起こそうという気運が高まりつつあるようにも思うんです。変わるべきタイミングで変わってこなかった。それがわかった今、既存のいいものは残しながらも、どんどん変化していけたらと思っています。

S/S Small Box Logo Tee

商品型番NT32052
FabricT/C Knit（ポリエステル72％、綿28％）

肩書きに縛られず、表現する人でありたい。

昨年末に、初めてZINEを作ったんです。実際に作ってみてわかったのは、「自分ひとりでできることって、そんなになかったんだ」ということでした。それまでは、何をするにしても自分ひとりで完結するほうが楽だと思っていたんです。どこかで否定されたら嫌だな……っていう思いもあったのかもしれない。でも、周りの人たちに話してみたら情熱が伝わって、「やってみようよ」って受け止めてくれて。写真やデザイン、印刷まで、自分ができないことをみんなが助けてくれたんです。それで最後には、「いいのができた！」って、みんなで乾杯することができました。人と関わることで広がっていく世界、自分の弱い部分もオープンにすることで築かれていく信頼関係。この経験があったから、コロナで人と会えなくなった時は逆に、やっぱりこれからは人と積極的に関わっていくことが大事なんだって、より強く思いました。

私は、マイナスなことをポジティブ変換するのが趣味のようなところがあるんです（笑）。だから、コロナにしても、今まではできていたことができなくなってしまった……と落ち込むようなこともなくて。これからの生活をどう楽しもう？って思ってました。旅が大好きだから、VR（Virtual Reality）旅をしながら、いつかやりたいことをいっぱい書き留めてワクワクしたり。女優業のほうも、自粛で撮影が延期になったことで、台本の解釈をもっと深めようと読み込んだり、いろんな映画を観て勉強もできました。それから、脚本家の友人と一緒に、コンテストに応募するためのアニメーション制作も始めました。

コロナに限らず、この先何かが制限される状況になってしまったり、それまでと環境が変わってしまうようなことがあったとしても、自分でやってみたいと思う何かがあるなら、そのプラットフォームを自分で作り出せばいい。人間って、表現することをやめられない動物だと思うんです。私は、肩書きのような枠に捉われずに、もっと大きくやわらかな意味として、何かを表現する人でありたい。そうあり続けるには、既存のシステムに頼りきりではなく自分で新しい環境を作りだしていくべきで、今はそれを誰もができる時代だと思っています。

S/S Colored Half Dome Logos Tee

商品型番NTW32050
FabricRecycle Poly（ポリエステル100％）

文明と自然、2つの“消えゆくもの”を旅する。

この6月に発売した「美しき古代文明への旅」特集は、『TRANSIT』創刊以来、初めて旅に出ずに制作した号になりました。世界中あらゆる移動が制限されたことで予定していた特集を中断し、まったく別の方法で制作しなければならなくなった時、まず編集部で話し合ったのは「自粛という言葉尻につられて、気持ちまで内向きにならないようにしよう」ということでした。

『TRANSIT』は、どんな雑誌なのかという根本に立ち返れば、旅がテーマではあっても、ショッピングや宿情報を伝えるようなガイドブックではありません。遠く離れた国々の見たことのない情景、人々の営みに触れ、視野を大きく広げることができるような旅の提案をしてきました。そう考えれば、たとえば世界数十箇所を旅することと、一冊の本を読んで内なる世界を広げること、その価値に違いはないんじゃないかと。

そうした気づきの中で、「消えゆくもの」という新たな特集テーマが浮かんできました。大きな時の流れの中で消えていくものとは何かといえば、文明と自然。政治経済から文字や暦、医療に至るまで、現代の生活のルーツを生み出したとされる古代文明は、高度な社会を築きながらも、なぜ消えていかなければならなかったのか。そこに思いを馳せることは、私たちにとって国境も時空も越えた大きな“旅”になりました。

今は9月に発売する「消えゆくもの」の後編として、地球環境と自然をテーマにした特集の制作が始まっています。古代文明のひとつであるイースター島の文明は、人口が増加し無計画に森林伐採を続けたことで崩壊していったという説は、よく知られていますよね。現代文明だって、このまま環境破壊を続けていけば、同じ道を辿らないとも限らない。このコロナ禍で、あたり前に存在していると思っていたものも、簡単に崩れ去るんだという現実に直面しました。今こそ、自然環境に目を向けて、私たちなりの旅という視点から伝えられることを届けられたらと思っています。

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商品型番NTW32039
FabricT/C KNIT（綿78％、ポリエステル22％）

Product

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阿部裕介（あべゆうすけ）

haru.

Kimino Miyazaki

Akira Sasaki

Ryohei Kamide

Toshimitsu Aono

Naoki Ishikawa

Taiga Nakano

Shen Tanaka

Sayoka Hayashi

Product

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阿部裕介（あべゆうすけ）

haru.『HIGH（er）magazine』編集長／「HUG」取締役

見えてしまった問題から、目を逸らさないように。

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宮﨑喜美乃トレイルランナー THE NORTH FACE アスリート

どんな状況下でも、ベストな状態で挑めるように。

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佐々木明スキーヤー THE NORTH FACE アスリート

本来、オリンピズムとは人生をクリエイトする哲学だった。

L/S Sleeve Graphic Tee

上出遼平テレビディレクター／プロデューサー

自然の中で打ちひしがれないとわからないことがたくさんある。

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青野利光『Spectator』編集・発行人

“土”は、除菌しすぎもいけないと言っている。

S/S Pictured Square Logo Tee

石川直樹写真家 THE NORTH FACE アスリート

順応することで、別の視点が生まれた。

S/S Half Dome Tee

仲野太賀俳優

変わるべきタイミングで変わっていくこと。

S/S Small Box Logo Tee

田中シェンモデル・女優・アーティスト

肩書きに縛られず、表現する人でありたい。

S/S Colored Half Dome Logos Tee

林 紗代香『TRANSIT』編集長

文明と自然、2つの“消えゆくもの”を旅する。

S/S Small One Point Logo Tee

林紗代香『TRANSIT』編集長